妊婦の歯科治療の適切な時期は?麻酔やレントゲンと注意点を解説
2018/12/29
妊娠中でも歯科治療は可能なのでしょうか?
それは、妊婦さんの妊娠の週数や体調、歯の症状とその処置内容によって異なります。
今回は妊娠中の歯科治療や妊婦さんのお口の中のトラブルについて解説していきたいと思います。
目次
1、妊娠の週数別の処置内容
妊娠初期:0~13週
妊娠初期は胎児の大切な器官形成期であり、胎児の感受性も高い時期のため、歯科治療に関しては応急処置にとどめるべきです。
つわりがひどい場合もあり、流産のリスクも高いため、長時間の治療は避けましょう。
妊娠中期:14~27週
妊娠中期に入ると母子ともに安定し、歯科治療を受けるのに適した時期です。
深い親知らずなどの外科処置は避けた方がよいですが、それ以外の処置に関してはほとんど問題なく行えます。
妊娠後期:28~40週
妊娠後期には大きくなった子宮の周囲臓器の圧迫が現れます。
あおむけで治療を受けると子宮が下大動脈を圧迫し、心臓への血流量を減少させるため、低血圧を引き起こす可能性があるため、座った状態で治療を受けるのが望ましいです。
この時期は積極的な治療は避け、応急処置にとどまる場合が多いです。
いずれの時期にも歯科医院に母子手帳を持参し、妊娠中であることをお伝えください。
歯科医師も妊娠週数に応じて対応し、説明と治療を進めてくれます。
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2、歯科用レントゲン撮影による影響
歯科用のX線はお口の周辺から照射されるため、腹部に直接当たることはありません。
また、X線の照射線量もごくわずかです。
最近では、デジタルのレントゲン撮影装置が普及しており、従来の照射線量の1/10程度に抑えられています。
よって、歯科で使用されるレントゲン撮影において胎児には、ほぼ影響が無いです。
3、局所麻酔の影響
歯科治療で通常使用される局所麻酔(キシロカイン)は胎児への影響が無く、妊娠の全週数においても使用可能です。
麻酔を使用せず、治療による痛みを我慢してストレスを抱えるほうが、胎児に悪影響を及ぼしかねません。
ただし、過去に局所麻酔によって気分が悪くなった等の経験がある場合はお伝えください。
4、お薬の影響
お薬のよる胎児への影響は、お薬の種類や投与された時期によって大きく異なります。
妊娠3週までは無影響期、4~7週は最も危険な絶対過敏期、8~11週は相対過敏期、12~15週は比較過敏期、16~17週は潜在過敏期とされています。
お薬の胎児への安全性については、アメリカのFDAリスク分類によると、安全性が確認されたお薬はありません。
よって妊娠12週までは、お薬の服用を避けた方が良いでしょう。
どうしても我慢できない、お薬の有益性が胎児への影響を上回る場合においては、産科医に相談の上、使用してください。
歯科で一般的に処方されるお薬
比較的安全とされる痛み止め(解熱鎮痛薬)
・アセトアミノフェン:カロナールなど
・漢方薬:ツムラ立効散エキス顆粒など
比較的安全とされている抗生剤(抗菌薬)
・セフェム系:トミロンなど
・ペニシリン系:サワシリンなど
絶対禁忌の痛み止め(解熱鎮痛薬)
・ボルタレン、ロキソニンなど
絶対禁忌の抗生剤(抗菌薬)
・クロラムフェニコール系
・ニューキノロン系
・テトラサイクリン系
・アミノグリコシド系
5、妊娠中のお口のトラブル
1、妊娠性歯肉炎
妊娠性歯肉炎は妊娠8週~32週の間に認められる歯肉炎です。
ホルモンバランスの変動により、体の変化や
お口の中の細菌の変化によって引き起こされ、歯肉が腫れて赤くなり、出血し易くなります。
このような症状が現れてもびっくりしないで、通常の歯肉炎を治す時のように、ていねいな歯磨きを行ってください。
2、歯周病の悪化
もともと歯周病を持っている妊婦さんは、妊娠によって歯周病がさらに悪化する傾向があるようです。
妊娠中の歯周病は早産(22週~37週未満)や低体重児出産(2500g以下)のリスクが高まるといわれています。
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妊娠前から歯周病に対するケアを行っておく必要があるといえます。
3、虫歯
妊娠初期にはつわりや嗜好の変化などにより、お口の中の環境が悪くなりがちです。
さらに妊娠中は、唾液の分泌量も減少するため、虫歯になりやすい状態です。
また、お口の汚れ(細菌)は赤ちゃんにも感染する可能性があります。
ご自分のお口の環境を良い状態に保つことが、赤ちゃんのお口の環境づくりにも繋がるため、毎日の歯磨きを心がけましょう。
4、妊娠性エプーリス
妊娠性エプーリスはホルモンバランスの影響で、歯肉が部分的にぷっくりと腫れた状態になる良性腫瘍です。
出産後には自然に治ることが多いため、特に焦って処置を考える必要はありません。
ただし、歯肉の腫れは歯肉炎や歯周病の悪化の可能性もあるため、ていねいな歯磨きだけは心がけるようにしましょう。
6、おわりに
歯科治療は妊娠によって、大きくその制約を受けることになります。
妊娠中に歯が痛くならないように、妊娠前からお口の環境を良い状態に保つ必要があります。
出来れば妊娠前に虫歯を治し、さらに親知らずなども早めに抜いておきましょう。
妊娠予定や、妊娠初期でまだわからない場合は、歯科医院へ受診した際に、その旨を伝えるようにしてください。
妊娠中に痛くないけど虫歯がある場合や心配な場合は、安定期に入ってから検診を受け、治療を全部終わらせるようにしましょう。
出産後は育児でさらに大変忙しく、歯科医院に行くことが困難だったり、ご自分の歯磨きもおろそかになる可能性があります。
お母さんのお口の健康を保つことが、赤ちゃんにとっても大切なことなのです。
一番大切なのは、妊娠の有無にかかわらず、常日頃からお口の中の状態を管理し、清潔に保つことで、ほかの全身的な疾患からも身を守ることが出来ます。
歯科医院への定期的な受診をおすすめします。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます!